令和7年度 埼玉県特別活動研究会 研究主題

 持続可能な社会の創り手を育成する特別活動


1 主題設定の理由

 これからの時代は、VUCAすなわち、不安定(Volatility)・不確実(Uncertainty)・複雑(Complexity)・不明確(Ambiguity)な時代と言われている。そのような予測困難な時代を生きる子供たちには、学校教育の中で必要な資質・能力を確実に育むことが大切である。しかし、令和6年度の全国学力・学習状況調査では、「学校に行くのは楽しいと思うか」の質問に「当てはまる」と回答した児童生徒が5割を切った。また、小中学校の不登校の児童生徒は10年以上連続で増加し続けている。さらに、内閣府による「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」において「自分の関与で社会は変えられる」と答える日本の若者は39%であり、アメリカの66%など諸外国と比べると低い割合である。そのような若者がこれからの社会を主体的に創っていくことができるのだろうか。明るい未来に向けて「持続可能な社会」を築いていくためには、学校教育を通して、主体的に社会に参画していくことができるような子供たちを育てていくことが、先送りのできない喫緊の課題である。今、この時代にこそ「新しい時代の学校教育の実現」に向けて考えていくことが我々教師の責務である。

 学校では、コロナ禍において友達との関わりが制限されてきた。しかし、アフターコロナとなった今でも、その影響により児童生徒が人間関係をうまく築けなくなってしまうことが懸念されている。今まさに人と人とをつなぐ特別活動の充実が不可欠である。特別活動には、人と人とがつながるリアルな実体験の中で「人から必要とされる」「人の役に立った」という喜びや手応えを感じられるような活躍の場が多くある。学校を、子供たち一人一人が自己有用感や自己効力感を得られるような、楽しく、居心地のよい魅力的な場所とするためには、子供たち自身が考え相手意識をもって行動することで、自分の学級・学校を自分たちの力でよりよくしていく経験ができるようにする必要がある。

 ここ十数年、日本を襲っている東日本大震災を始めとする大地震や大規模な水害などが発生する度に共助の力を発揮し、「お互いさま」の精神で支え合ってきた我々日本人。さらには大谷翔平選手やサッカー日本代表チームをはじめとする世界で活躍する多くの日本人は礼儀や心配りなど様々な場面で世界に評価されている。これらの力は教科指導だけで養われてきたものではない。学習だけでなく生活までも教育の対象としている日本が誇る「全人的教育」の成果であり、その根幹たる特別活動の重要性が再認識されたともいえる。未来を担う子供たちが様々な活動を「自分事」として捉え、持続可能な社会を創っていくためにも特別活動の理念を我々教師が再確認したい。そして、特別活動の実践を積み上げていくとともにブラッシュアップしていくことこそが持続可能な社会の創り手を育成していくためにも欠かせないことである。

 本会では昨年度、「持続可能な社会の創り手を育成する特別活動」を研究主題に掲げ、特別活動が育成する主体的に社会に参画する態度や、多様な他者と協働する力を育むための指導と評価の方法について研究を深めた。その成果として、①育むべき資質・能力が明確になったこと、②主体的に社会に参画する態度を育むための取組や指導の方法についての工夫、改善ができたことの2点が挙げられる。その一方、課題として、①「持続可能な社会の創り手」の捉え方によって「持続可能な特別活動」の実践方法に重きが置かれ、資質・能力の育成から離れてしまったこと、②学年間・活動間のつながり、各教科との関連を図っていくことが確認された。

 以上のことから、前年度の研究の成果と課題を踏まえ、より効果的で児童生徒の資質・能力の育成に関わる指導と評価の在り方について、さらに研究を深めていくために、研究主題を前年度と同様に「持続可能な社会の創り手を育成する特別活動」と設定した。


2 研究の目標
 学校における「持続可能な社会の創り手」とは、生活上の諸問題を自らの課題として捉え、身近なところから取り組むことにより、それらの課題を解決につなげる新たな価値観や行動を生み出し、持続可能な社会を創造していく人と考える。そこで、以下のことを研究の目標とする。
持続可能な社会の創り手を育成するための指導と評価の方法について明らかにする。
「持続可能な社会の創り手」に必要な資質・能力とは、例えば以下のように考えられるが、どのような力が必要であるか明らかにできるよう、さらに研究を進めていく。

・生活上の諸問題を自分事として捉え、課題意識をもち、多面的・総合的に考え、解決に向けて行動することができる。
・自分の役割を自覚し、生活上の諸問題の解決に向けて、他者と協働することができる。
・自他のよさを生かしながら新たな課題を見つけ、課題を克服するための目標を決め、実践することができる。
・活動を振り返り、成果や課題に気付き、次の活動につなげることができる。 「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」の視点を踏まえた指導計画を作成する。

 また、ESDで目指す「6つの視点」と「7つの能力・態度」についても参考に研究を進めていく。


3 研究の内容
 研究を進めるにあたり、次に示す2つの内容を中心に、専門委員会ごとに研究の視点を設け、それぞれの実践において、育成を目指す資質・能力を明確にし、その育成のための手立てや方法について研究を深めていく。

(1) 持続可能な社会の創り手を育成するための指導計画
 子供たちの今の実態と将来の姿を見据え、各実践あるいは学期や年間で、発達の段階に応じた活動を展開していくための指針となる指導計画について研究していく。以下は、その留意点である。

① 「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」の視点を踏まえた指導計画を作成する。
② 持続可能な社会の創り手に必要な力を明確にした指導計画を作成する。
③ 発達の段階を考慮し、学年間の系統性やつながりを意識した指導計画を作成する。



(2) 持続可能な社会の創り手を育成するための指導と評価の方法
 指導については、集団活動のよさを生かしながらも、事前・本時・事後それぞれの活動における実践上の留意点にも目を向けていく。また、評価については、一人一人の変容を見取るために、自己評価に留まらず、よりよい相互評価の方法にも重点をおいて研究していく。以下は、その留意点である。

① 育成を目指す資質・能力を明確にする。
② 一人一人が持続可能な社会の創り手となるように具体的な手立てを工夫する。
③ 学年間や活動間のつながり、教科等との関連を意識した指導と評価の方法を工夫する。



 社会が急速に変わっていく中で、状況を的確に捉え教育における不易と流行について考えることが常に求められている。若い教職員の増加に伴い、不易の部分の継承が難しくなっている。「なすことによって学ぶ」を方法原理としている特別活動においても、理念が十分に理解されていないまま活動のみが行われていることはないだろうか。「持続可能な社会の創り手」の育成には特別活動の本質を踏まえた継続的な実践が欠かせない。「小さな社会」と呼ばれる学校。ここで生活する子供たちが、今、起きている問題を“他人事”で済ませることなく、“自分事”として捉え、課題解決に向けて“だれとでも”関わり、“いつでも”取り組むことができ、“いつまでも”続けられるように資質・能力の向上を目指していきたい。


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〈過去の研究主題〉
 令和6年度研究主題 「持続可能な社会の創り手を育成する特別活動」
 令和5年度研究主題 「多様な他者と協働する力を育む特別活動」
 令和4年度研究主題 「多様な他者と協働する力を育む特別活動」
 令和3年度研究主題 「よさや可能性を発揮し合い、確かな資質・能力を育む特別活動」
 令和2年度研究主題 「よさや可能性を発揮し合い、確かな資質・能力を育む特別活動」
 令和元年度研究主題 「新学習指導要領における特別活動の展開~集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせる実践を通して~」
 平成30年度研究主題 「新学習指導要領における特別活動の展開」
 平成29年度研究主題 「豊かなかかわりの中で自尊感情を高める特別活動~基礎・基本を踏まえた集団活動の実践を通して~」